2010.1.5

 もう少し前の時間に目覚ましをセットしていたはずなのだが、起きたら8時半だった。それで、僕はもちろんのんびりなのだが、ファルマンは9時に化粧を終えた状態で家を出なければいけない流れだったらしく、大わらわだった。当初は着付けの人に家まで来てもらい、ファルマンと僕の寝ている和室で作業をしてもらう予定だったのだが、なんかその着付けの方の家族が体を悪くしてしまったとのことで、急遽そんな風になったらしい。イベントが決してすんなりとは進まないこの感じ、さすがはファルマン家クオリティーだ。
 なんとか準備を終えた3姉妹を義父が美容院まで届けにゆき、義母は部屋でひとりで着物に着替え。そして僕はリビングで日本海テレビを観つつ、パジャマのままパンをもそもそ食べた。
 義父が帰ってきて、少ししたら義母の着付けが終わり、また義父が義母を美容院に届け(田舎はなにかと車の移動が多いな)、また帰ってきて、さすがにそろそろ男性陣も着替えて待機しておくかという時間になって、11時前にようやくスーツに着替える。結婚式ぶりに着たスーツのポケットには、食事会の際にファルマンが読んだ両親への手紙がそのまま入っていて(渡さずに僕が受け取ってしまったらしい)、愉快だったので机の上にそれらしく置いておいた。帰ってきてから義母が見つけてびっくりするだろう。
 ちょうどスーツに着替えたあたりで、女性陣から電話がかかってくる。ここでようやく僕も移動だ。デジカメを忘れずに持ち、義祖父に声を掛け3人で出発。しかし「考えてみればあいつ(義母)には自分で運転して車を持ってってもらえばよかったわ」という計画性のない義父にいきなり、「じゃあこっちの車の運転頼む」とキーを渡される。そのまま義父と義祖父の乗る車の後をついて走った。とは言え美容院の名前も聞かされていなかったので、急に駐車場に入られたりしたら嫌だな、と思っていたがなんとか無事に着けた。
 そうしたら車が着いたのが見えたらしく、女性陣がすぐに店から出てくる。着物の3姉妹。華やかだー。ファルマンはもちろん付け下げで、地味な着物だけど。本日の主役の下の義妹(ちなみに書いてなかったかもしれないが、今回の撮影会は下の義妹の成人記念なのだ)はメイクも美容師さんにやってもらったので、さすがに際だっている。もっとも元から3姉妹では下の義妹がいちばんはっきりした顔をしているのだが。
 それから荷物を義父のほうの車に乗せ、ついでに僕もそちらに乗り込み、僕の運転してきた車に義母と3姉妹が乗り込む。スーツ男子3人と着物女子4人という編成。なんかよく分かんない編成だな。義父の車のほうが大きいのに。どうも計画のツメが甘い。
 とにかくまあそんな感じで移動開始。目的地は出雲大社だ。写真館も出雲大社近くの、結婚式のときと同じ店にお願いしているのだという。華やかさゼロの車中の雰囲気に挫けないよう、気持ちをしっかり持って20分間ほどの時間を耐え抜いた。
 車から降りるとき、両親が荷物を出そうとして、義母の持ち上げた箱の角が義父の左目に刺さる、という事件が勃発する。ふたりとも焦ってトランクにがっついた結果だ。それまでわさわさしていた義父が急にテンションが下がったのがおもしろかった。サバンナのコントのやつだ。まあなんだかんだで義父は大丈夫だったらしい。
 天気は雨か雪みたいな予報がされていたらしいが、案外と保っていた。というか雲は薄そうで、たまに陽さえ射す。東京の天気さえ当たらないのだ、考えてみれば山の多い島根県の天気が当たるはずがないよな。もっとも風は割と強く、そして東京のそれとはレベルの違う冷たさだった。
 写真館は結婚式の打ち合わせの際にも来たが、2階の撮影スタジオは初めて。
 まずは7人全員で撮る。いざ撮る段になって、やはり僕がここに入るのは場違いなような気がしてくる。長女の夫、ちょっと付き合いがよすぎて気持ち悪い。と言うか当初は僕としても入る予定じゃなかったのだ。純粋にカメラ小僧として、ジャンパーとか着て参加するつもりだった。でも「せっかく来るんなら一緒に入りなさい」という義母の薦めがあり(まあ義母も立場的にそう言うっきゃないだろう)、「きっぱり行かない」か「親族として参加」のどちらかしか選択肢はなさそうだったので、仕方なく後者を選んだという次第なのだ。いったい誰になにを断っているのかよく分からないが、僕は無自覚に邪魔者だったわけではないのです。くれぐれもそのことは強調しておきたい。
 でもその1枚を終えたあとは晴れてお役御免。撮影者に徹する。写真館のスタジオで横から素人が写真を撮っちゃダメかな、と思ったけど、ご自由にどうぞとのことだったので存分にやった。
 次の撮影は両親と3姉妹の核家族5人。義父が中心に立ち、右に長女と次女、左に三女と妻という配置。思わず純粋理性批判を想起する。いちばん想起しちゃいけないことのような気がする。3姉妹の父というのはすごいな。
 その撮影を終えたあとは義父は義祖父を家に送り返さなければいけない。なんと義祖父はこのあと葬式なのだ。ちょうどこのタイミングで義祖父が参列しなければならない葬式が営まれているのだそうだ。それで、なにしろこっちは孫の成人記念、あちらは葬式なので、当然ながら背広も替えなければいけない。そんなわけで義父は僕にビデオカメラを託し、義祖父とふたりで出ていった。このドタバタ感。本当、さすがはファルマン家クオリティー。
 写真は3姉妹で撮ったりなどしたあと、成人記念の三女のソロ写真に移る。いろんなポーズ、いろんな表情をカメラマンから求められる三女を、デジカメ2台とビデオカメラで撮りまくった。朗らかな性格の上に交友関係の広い三女は写真を撮られ慣れているらしく、男性カメラマンからの要求を巧みにこなし、カメラマンは後半乗ってきたのか、撮影しながら「そうこなくっちゃ」とかつぶやいていた。これはあとから次女と「そうこなくっちゃ」は気持ち悪かったねと語り合った。
 義父が帰ってきたのは撮影の終盤だった。
 写真館を出たあとは目の前の出雲大社へ。僕にとっては今年の初詣でもある。外に出るとやっぱり着物の3姉妹は華やかでいい。境内の砂利道をあまりバランスを崩さずに歩く3姉妹を、うしろ歩きでたくさん撮影した。もはや完全にカメ小だ。しかしガランと広い出雲大社は風が身体に直撃し、ひどく寒い。ファルマンなんか完全に凍えていて、幅広のストールを思いきり広げ身体を覆うようにして巻くものだから、あとから撮った写真を見たところ、もはやそれは着物姿の写真ではなく、ストール姿の写真だった。阿呆だ。
 帰りの車は、義母が義父のほうの車に乗り、3姉妹の乗る小さいほうの車を僕が運転する。晴れ着3姉妹を乗せて車の運転。行きの哀しみを取り返すのに十分な幸福車両だった。

(中略)

 11時を過ぎたあたりで両親は寝室へ。お風呂を済ませた我々もそれから30分ほどでWiiを終わりにし、襖で仕切られたそれぞれの寝室に向かった。
 でもこの夜はこれからが愉しかったのだ。
 なんと3姉妹が一斉に僕のちんこを奪いにかかってきたのだ! というのは嘘で、本当にそんなことがあったら決してこんなところには書かないのだが、でも愉しかったのは事実で、なにをやったのかと言えばDSでドラクエ9をやったのだ。義妹らと僕と3人で、通信して。ファルマンだけ貧乏な家の子なのでDSを持っておらず、次女の画面を見てるだけだった。もうすっかりやめて久しいドラクエだが、「ぜひ持ってきて」という上の義妹からの誘いに乗ってよかった。通信プレイ(義妹らとなら)愉しいな。三女の世界に集まって、3人でメタルスライムやはぐれメタルをたくさん倒した。ストーリー上ではクリアまでしているのに、僕の男主人公の装備は相変わらず下半身がブーメランパンツ、頭は猫耳バンドで、義妹らにきゃっきゃきゃっきゃされた。これはほとんどコートの下は全裸という変態行為に近いような気もする。「なんでパンツなん?」と三女に訊かれ、「いつでも応じられるようにだよ」と答えたのだが、これはほとんど無視された。「パーティのほかの女の子もみんなパンツなんだよね」と次女が声を掛けてきたので、「主人公だけはパンツだけど他の子はショーツだよ」と答えたら3姉妹の3人ともから引かれた。ゾクゾクした。そんな感じの夜だった。