2008.8.23

 僕だけが土曜だというのに労働ということで、ファルマンがお弁当を作ってくれる。基本的に冷凍食品ばかりの、しかし「愛妻弁当」だそうだ。そのおかずのなかに、スペースを埋めるために置かれた竹輪があったのだが、冷凍食品ばかりのお弁当を製作したファルマンが、「見て見て、創意工夫」と呼ぶので近付いて見てみたら、ふたつ並べられた竹輪の内側の円の中に、細かくした味付け海苔が適当に入れられてあって、まあ竹輪の内側に味付け海苔が入れられてあったから、(ああ竹輪の内側に味付け海苔が入れられているなあ)としか思わなかったのだが、(でもわざわざ呼んで見せるということは、この子は本当にこれで褒めてもらえると思ったんだよな)と僕は慮り、がんばって「わあすごいアイディアだね」と褒めてあげたのだった。思うにそれは僕の人間性が成長し、限界の拡張した瞬間だったのではないか。竹輪の内側に味付け海苔を入れた25歳のことを褒めてあげられた人間に、褒めることのできないことなんてそうそうないのではないか。この精神への鍛錬と成長こそがファルマンと一緒に暮らす効用であるなとしみじみと思った。