2008.6.29

 
 一部の報道により既にご存知の方も多いと思われますが、先日おむすび三太先生が、持病の癪でお亡くなりになりました。そこで今晩はおむすび先生の追悼企画と致しまして、先生と親交の深かった田村泡の助先生、金沢一先生両氏をお招きし、生前のおむすび先生の人柄や逸話などを振り返ってゆきたいと思います。両先生とも本日は宜しくお願い致します。
 田村泡の助(以下:田)「お願いするでござる」
 金沢一(以下:金)「よおひくおへはいひはす」
 まずは両先生とおむすび先生のご関係から聞いていきましょう。金沢先生は飴を舐めていらっしゃるので、先に田村先生からお願いします。
 田「うむ。おむすび氏と拙者の結びつきは、やはり学年題俳句ということになろうかの。完全に句会でしか顔を合わさなかったがゆえ、作品以上のことは知らん。しかしひとつ言えることとして、儂はおむすび氏の作品のことが嫌いではござらんかった。句会員の内には、氏の定型を蔑ろにした句を嫌悪する輩がおったのは事実じゃが、拙者はそれもまた味であるとして認めておった。おそらく氏もまたそのことは感じ取っておったんじゃなかろうかと思うの。氏が儂を見る目にだけは、他の句会員に氏が向けていたような敵意はついぞ感じ取れんかった。直接話をしたことは実はいちどもござらんが、思うに氏は拙者になんかしらの救いを求めていたんじゃないかと思うんでござる。儂にはそんな風に思えてならんのじゃで……」
 なるほど。田村先生、キャラクターがまるで定まらないなかでありがとうございました。続いて金沢先生、飴は舐め終わりましたでしょうか。あ、大丈夫ですか。それではお願いします。
 金「おふすひさんとわらひのはんへいはへすね……」
 えっ、ちょっと待ってください。飴はまだ口の中にあるんですか。あ、舌の裏に隠してたんですか。なんでそんなことするんですか。
 金「それが、自分でもよく解らないのです。気付くといつもこんな調子で……」
 あ、でも別にちゃんと喋ろうと思えば喋れるんですね。じゃあお願いしますよ。
 金「おふすひさんとわらひのはんへいはへすね……」 
 あちゃー。
 田「司会者殿」
 はい、田村先生なんでしょうか。あ、単なる挙手かと思ったらピースじゃないですか。オシャレですね。
 田「平和への祈祷でござる」
 大事ですね。でも今はどうか、おむすび先生への哀悼のほうでお願いしたいです。まあいいですけど。それで、なんでしょうか。
 田「おむすび氏の句で、それがしの最も好きな句はなんでしょう」
 「なんでしょう」? えっ、もしかしてクイズですか?
 田「チッチッチッチッチッチッチ……」
 わあ、時間計ってるじゃないですか。ぜんぜんクイズなんですね。勝手クイズがもう始まってるんですね。えーと、問題は、田村泡の助先生のいちばん好きなおむすび三太先生の句ということですが、うーん……、ああでもないし……、こうでもないし……、あ、分かりました! わたし、その答えに興味がないです! どうですか、大正解でしょう!
 田「それは、『フレー、フレー、あたいたちおんなのこ』でござるやろ」
 ご、ござるやろ!? 先生いろいろ自由すぎますよ! まあいいですけど。えっと、その句は高校1年生の学年題「フレー」の句ですね。たしかにいい句です。定型をまるで守ろうとしていない感じも、おむすび先生らしさがよく出ていると思います。
 金「いやあ、私はむしろこちらの句のほうが好きですね」
 あ、金沢先生。ぜひおねがいします。
 金「『宇宙に散らばる数限りない星々のなかで、地球という一軒家に生まれたきょうだいであるはずの僕らなのに、どうしてこの世からはチャンネル争いがなくならないのだ……』」
 そんな句ないですよ。
 田「いや、ある」
 田村先生。本当ですか。あるんですか。私、勉強不足で知りませんでした。
 田「この句は、紀元前3000年ごろ、ジャスニン川沿岸で栄えていたと言われるニンジャス文明、ここに生きた人々の信仰の対象は炎であり、毎月満月の晩には3匹の子豚を火で炙り、それはそれは美味しく召し上がっていたそうでごじゃる……」
 はい。了解しました。ではですね、私の好きなおむすび三太先生の句をここで発表させていただきたいと思います。それはやはりおむすび先生最期の作品、つまり辞世の句と言ってもいいこちら、『お姉ちゃん泣き虫毛虫でもそんなお姉ちゃんがみんな大好き虫だよ』で、私はこれを目にしたとき、おむすび先生の6姉妹への愛情を強く感じたのです。6姉妹がそれぞれ離れ離れになる日のことを考えると、高3の長女はどうしても泣き虫になってしまう、そんな長女のことを泣き虫毛虫とからかう妹たちですが、しかし妹たちは自分たちが、紛れもないお姉ちゃん大好き虫であることを自覚しているのだ、という、これはやはり102歳で、実際に16歳の玄孫がいたおむすび先生だからこそ作れた句だと思うのです。ここまでの境地にたどり着くのは、15歳の田村先生、8歳の金沢先生にはまだ厳しいと思われますが、今後もどうか切磋琢磨して、学年題俳句の気運を盛り上げていっていただければと願います。それでは両先生、本日は本当にどうもありがとうございました。
 田「かたじけない」
 金「はりはほうほはいはひた」