2007.4.25

 恋人に髪を切ってもらう。サラリと言ったが初の試みである。
 こちらに来てからというもの、どうも気に入る美容院を見出せず、散髪のことを考えると憂鬱になる日々だった。それゆえに前髪がどうしたって目に直撃して困るという風になるまで耐えるというような、そんな生活を送っていたのだった。
 これの改善として、恋人に切ってもらう作戦という今回の運びとなったわけである。恋人ならば気に入らなくない。だいじょうぶだ。
 もっとも心掛かりなこととして、恋人は決して器用な人ではないというのがある。むしろ大いに不器用である。そのため任せてよいのかという思いはあった。しかしまあいいかとも思った。変になったらなったで翌日は整髪料でごまかし、すぐにプロのところへ行けばいいかと。
 それでやってもらったわけだが、これが殊の外いい。
 とてもかわいいのである。ちょっと女の子風のマッシュで、デビュー直後の広末涼子を彷彿とさせる感じである。すっかり気に入り、成功した美容院散髪でもなかなかこんなにはならないというぐらいの度合いで嬉しくなってしまった。
 そう言えばすっかり忘れていたが、恋人は全体のそれっぽい雰囲気を掴むのが非常に上手なのだった。もはやほとんどイメージのみで生きていると言っても言いすぎじゃないほどに。彼女の口から放たれる「イメージ中国語」「イメージフランス語」のなんと上手いことか。そんな、僕という人間のイメージをそれっぽく掴み、散髪のイメージをそれっぽく持った彼女が、それっぽい完成品を生み出さないはずがなかったのだった。
 これからはいつもやってもらおうと思う。