2006.2.10

 プロッペッパッピローニ14世(王族の末裔)
  
 ……せやからおっさんが言いたいのはな、お嬢ちゃんさっきからおっさんのこの愚息を見て、目ぇ見開きよるやろ、息ぃ飲みよるやろ、首ぃ背けよるやろ? せやけどな、一見まあそやな、さも汚そうに見えるこのおっさんの愚息やけどな、まあ今でこそお嬢ちゃんの視線にあてられて、こないに破邪の剣か言うぐらいに天高くそそり立ちよる、なんや道具として使たらベギラマ発動するんちゃうかいうくらいの様態しとる割に、いざというときに本領を発揮せえへん、大事な場面ですぐにプレッシャーに押し潰されよってからにメンタル面のトレーニングが必要な、せやけど潜在能力という観点からは大いに注目に値する、そのことは大学の偉い先生が保証するところのこの愚息なんやけどな、実は決してお嬢ちゃんが危惧しよるほどに汚いわけやないんやで。なんやねん、人体の一部にそないにどうしようもなく汚い部分なんてあるはずないやろ。ほんま怒るで。そりゃ若さの神の庇護下にあるところのお嬢ちゃんにはピンと来おへんかもしれへんがな、おっさんもまた生きとるんやで。生きものなんやで。O2吸ってはCO2吐き出しとるんやで。逆はあらへんねん。おっさん海草とちゃうからな。せやからお嬢ちゃんとおっさんの違いは、エックスかワイかいう、アルファベット一字の違いごとき瑣末なものなんやで。例えばおっさんかて古い角質は皮膚から剥がれ落ちて日々新しなっとるしやな。ほら見てみい、こうすると出てくるやろ古い角質が。角質さんありがとうっちゅう話や。いやいや、なにが汚いねん。阿呆か。おいおいお嬢ちゃん、おっさんがいつまでもうだつの上がらない優男やと思ったら痛い目見るで。おっさんこう見えても合気道2級やねんで。しかもほぼ準1級ぐらいの2級やねんで。準1級に近い2級いうたらあれや、キットカットを1本ずつ割らずに喰うぐらいの芸当も可能なんやねんで。お嬢ちゃんできひんやろ。割って喰うやろ。キットサクラサクよ、やろ。ええねん。言わんでも分かるねん。おっさんこう見えてもお嬢ちゃんの3倍以上の長さ生きとってからにな、お嬢ちゃんの考えとるようなことで分からんことはないんやで。ホンマやて。履歴書の特技欄に書きたいくらいや、乙女回路には自信があります、て。ほな当てたろか、お嬢ちゃんいまファッションについて若干の感情があるやろ。……嘘やて。あるはずやて。ファッションにまったく関心のない女の子なんておるはずないやろ。いつだって女の子はかわいい服やアクセに思いを馳せとんねん。おっさん知っとんねん。嘘ついたらあかんで。負けず嫌いなんはたしかに萌えやわ。萌え〜やわ。ただし嘘はあかんで。おっさん祖国はイギリスやねんで。グレートブリテンやねんで。まあええか、この話は。せやからな、おっさん言いたいのはつまり、おっさんのこれは汚なないいうことや。まあきれいとは言わんで。おっさんもそこまで独善家やあらへん。まあきれい汚いなんて基準の問題やからな、菌がまったくない状態をきれいな状態いうか言うたらそんなことあらへんわけでな、お嬢ちゃんたちが思わず「わあきれい」なんて声を上げてしまう一面のお花畑なんてな、そりゃもう菌だらけやねんで。せやからおっさんが「世界でいちばんきれいなのは常におっさんの愚息である」と認定したらおっさんの世界で一番きれいなんはおっさんの愚息いうことになって、それ以外のものは「汚い」か「きれいすぎる」かに分類されることになるんやで。ことほど左様に世界はおっさんの思いどおりなんやで。しかしそれは別の話や。不思議の国のアリスや。現実には対応せえへん。せやからここでは、まあつまらん見方やけど菌の多少できれい汚いを捉えるいうことにしようや。そうしたときおっさんの愚息は汚いか。答えはNOや。お嬢ちゃん小便とかのイメージに囚われすぎとるわ。小便の囚人や。たしかに股間周辺いうんは、空気のこもりやすい部分やで。つまりそれはどういうことか言うたら熱が高まりよるわけで、それによって汗も発生することには、熱あり水分あり駅徒歩5分南向きバストイレ別、菌も非常に発生しやすい土壌になっとるわな。しかしお嬢ちゃんあれや、お嬢ちゃんが思いを馳せなきゃあかんのんはおっさんの愚息にまつわりつきよる菌のことやない。ワイのおっさんに対してエックスの自分はどうなのか、言うことや。そして同時に、おっさんの言いよる菌大量発生の条件、せやから熱と水分やけどな、これを股間周辺よりもはるかに高いクオリティーで実現するフィールドが自分にはあらへんか、言うことも考えなあかん。……思い当たるかいな。そうや。言葉が出ないやろ。それとはつまり、お嬢ちゃんがそうしてパクパクしとるところの口や。実を言えばおっさん、さっきからお嬢ちゃんがおっさんにおっさんの愚息を眼前に突きつけられて目を逸らしたくなるのよりもはるかに強い気持ちで、お嬢ちゃんの咥内をおぞましい気持ちで見よるんやで……。(つづく)