2009.8.13

 夜に到着したので1泊2日の2日目なのだが、気持ち的には今日が出雲1日目だろう。
 初日にして今日は外泊。鳥取県は大山のあたりに行き、義父の会社の保養所的な所に泊まるのである。これを当日いきなり言われたら憤っていたが、事前に告知されていたので大丈夫。義妹らと同じ部屋で寝ることになるらしい、という情報に、ここひと月ほど僕がどれほど心を躍らせたかは、今さら言うまでもないだろう。
 義父の車(ファルマンと僕乗車)と義母の車(義妹ら乗車)に分かれて午前中に出発。まずは近所のスーパーに立ち寄り、夜に部屋で行なう予定の焼肉の材料を買い込む。スーパーでの買い物は僕の大いに得意とするところ。義父母は忘れ物があったとかで2度ほど次々に家に帰っていき、3姉妹は自分が食べたいものに関して意識が低いので、自分の采配で材料を選べ、とてもよかった。どうしたって自宅じゃない不自由さはあるけれど、これで少しは救われた。
 買い物を終えて再び車に乗り込み、いよいよ本格的に移動。しかしこれがつらかった。なにがつらいって義父の運転がだ。義父(義母もだが)の運転は典型的な田舎の人の運転で、基本的にやけにスピードが速いし、スピードが遅い車が前にいるとイラつくし、イラつくどころか煽りさえする(煽る人なんてこの世に実在するのだな)し、ちょっとでもまごつくとクラクションを鳴らすしで、乗っていると怖いのを通り越して気分が悪くなるのだった。自分の乗っている車が道路にものすごい悪い成分を振りまいて走っている、という事実に落ち込むのである。しかし残念なことに今回の帰省ではやけに父親の車での移動が多かったのだった。
 こっちの感覚ではちょっと行動範囲内じゃないくらいの時間を掛け、やっと目的地に到着。保養所は割とホテル的な立派な建物で、たしかファルマンの口から出たんだったはずの「ペンション」とはぜんぜん違うものだった。通された部屋は、いかにも保養所的なリゾートっぽい感じで、中2階とかのある凝った造り。話で聞いていた通り2LDKで、しかし想像ではリビングを挟むように北と南、あるいは東と西に和室と洋室がある、みたいな感じだったのに、実際はリビングの隣に和室、その隣に洋室、という感じで、つまり3姉妹と僕の寝る和室と、義父母が寝る洋室は隣り合っており、僕がここ1ヶ月でさんざん夢想した、3姉妹との純粋理性批判的な展開は、とてもじゃないけど実現不可能だった。まあ現実ってこんなもんだよな。
 到着が昼過ぎになったので、とりあえずすごい空腹だった。それでお昼はどうするつもりなんだろうと思っていたらノープランだったらしく、たまたま僕が買い物カゴに入れていたチルドの焼きうどんがあって、それを食べようということになった。無計画だな! その焼きうどんは僕が焼肉のあとにやるという確固たる計画のもとに買ったものだ。しかも2玉しかない。でも本当にそれをみんなでお昼ごはんとして食べた。お腹を空かせる効果しかない感じの切ない量だった。
 そのあとみんなでWii。グーパーで分かれ、義父・ファルマン・三女チームと、義母・次女・僕チームで、スポーツのやつで対戦。僕は三女とボーリングで対決し、普通に負けた。三女と来たらターキーとか繰り出すので勝てっこない。でも僕以外のふたりが勝ったので、チーム的にはこちらの勝利だった。スポーツのやつのあとは、アマゾンで注文しファルマンの実家に送品してもらったメジャマジマーチをやる。期待していた通りのおもしろさ。チェックするたびにどんどん値段が下がっていき、あまりいい評判も聞かなかったこのゲームだが、Wiiリモコンがマーチングバンドの指揮棒になるというそれだけの要素で、買う価値は十分にあると思う。すっごく愉しかった。マリオカートのざっと20分の1くらいは愉しかったと思う。
 Wiiをやって汗をかいたこともあり、夕食前にお風呂ということになった。大浴場らしいので、義父と裸の付き合いなんて考えられない僕はもちろん行かない。それで僕だけ留守番かと思ったら、次女も行かなかったので、ふたりで部屋に残る。ふたりになったので、昨日に引き続いてふたたび照れた。これまで100冊以上読んできた純粋理性批判だったら、義妹と部屋でふたりきりになったら間違いなくエロい展開となるのに、現実的には難しいな。そして義父と大浴場はどうしても嫌だが、たしかに夕食前に風呂は入りたかったので、部屋のごく普通のお風呂でシャワーを浴びることにし、「じゃあ俺シャワー浴びるわ」と声を掛けるも、義妹は「じゃあ私も一緒に入っていい?」などとは一切訊いてこない。おかしいな。小説では義妹っていうのはそうじゃないんだけど。
 ザザっとシャワーを浴びるも、まだ大浴場組は帰ってこない。仕方ないので焼肉の下準備を始める。ファルマン家のだらだらした支度を待っていたら確実に空腹でイライラしてしまう。こちとらお昼の焼きうどんのことがいまだに水に流せていないのだ。勝手にやらせてもらおう。玉ねぎを切ったりかぼちゃを切ったりピーマンをぞんざいに切ったりしていたら、ファルマンと三女が帰ってきて、義父母はビリヤードをしていてまだ帰ってこないと言う。そうかそうか。義父母は俺の空腹についていかがお考えか。果たして本当にいまビリヤードか。
 そのあとも準備を続け、かなり終盤になったところで義父母が帰ってくる。いちおう帰ってきたならもう待つ必要はない。義父の音頭とか気にせず、義妹らがWiiをやめるのとか気にせず、僕は勝手にごはんをよそい、ホットプレートで肉を焼き、食べた。僕はお腹が空いていたのだ、それで準備をして、焼いて食べたのだ、誰にも文句は言わせない。
 焼肉はおいしかった。ビールもおいしい。「焼肉だけじゃあれだから」みたいなよく解らない理由で、食卓にはトマトをカットしただけのものも出され、「パピロウ君も食べられる?」と訊かれるも、もちろん喰えない。「オーブンで焼いてチーズかマヨネーズがあれば……」と答える。でもここは自宅ではないので、オーブンもなければマヨネーズもない。「そういうのが嫌だからキャンプは考えられないんだ」という僕の言葉に、「あるもので済ますのがキャンプの醍醐味だ」と義父が反論し、話はいつまでも平行線だった。せっかく自宅には、長い年月をかけて揃えた、お気に入りの調味料とお気に入りの調理用具があるのに、それを放棄して不便な状況に身を置く理由が、僕には本当に解らない。きっと一生解らないんだと思う。
 焼肉を食べたあと、僕だけ大浴場に。義父との接触はとにかく避けたかったものの、実は広い風呂は何気に好きだ。人が微妙にけっこういて、僕は男の身体が嫌いなので、そこがちょっと不愉快だったけど、まあお湯は気持ちよかった。
 部屋に帰るともうけっこうくたくた。適当にWiiをやったあと、お布団を敷いて寝ることに。部屋が何畳だったのかよく覚えていないが、まず3姉妹が布団を川の字に敷き、その川の頭に横棒を置く感じで僕の布団を敷いた。近い。義妹らかなり近い。興奮する。興奮するものの、なにかが起きるということはなかった。すぐ隣で義父母が寝ているため、照明を消してからのひそひそ話などもほとんどなし。残念だ。すごく得意なんだけどなあ、照明を消してからのひそひそ話。
 しょうがないので健全に寝た。