店の人に話しかけると、「ああ、ヒット君の」という感じで反応してくれて、ボックスを見て怪訝に感じたことでもあったのだが、合計14体納品したヒット君フェルト人形は、店の人に認識される程度には動きがあり、すべて完売していたのだった。嬉しい。お店の人からは「ヒット君売れるのよー。作ってきてくれた?」と訊ねられ、たしかにボックスにはバッヂとかくるみボタンしかなくてすっかり寂しい感じになっていたのだけど、もちろん人形なんかできているはずがなくて、「こんど作ってきます」と返事をした。それでこの3ヶ月で売れた金額の取り分を受け取り、なにしろ14体も売れていたので、それはまあまあの臨時収入的な金額であり、「おおお」と軽く興奮し、しかし契約期間はやっぱり過ぎていたので、受け取ったその金額から、「じゃあとりあえず2ヶ月分お願いします」という感じで契約を延長した。臨時収入と言いつつも、場所代と材料費と労力を考えれば収入でもなんでもないのだが、しかし僕の作ったヒット君フェルト人形14体を、だれかぜんぜん知らない人が持っているのだ、と思うとこれまで味わったことのない快感があったので、精神作用的には大いにプラスなのは間違いない。
店を出て駅に戻りながら、「作らなくっちゃねー」という話をしていたら、ファルマンが「ネットでも売ったらいいんじゃない」とか言い出し、それに対し「そんなもん生産が追いつくはずねえじゃねえか」と僕は答えたのだけど、その一瞬後、『生産が追いつかねえよ』という自分のその言葉の厚顔さに、「きゃああ(照)」となった。でもマジで祖母とかに手伝いを依頼しようかな、とは思う。ファルマンも「私も手伝うけん」と言ってくれたが、ハンドメイドでファルマンに手伝ってもらうことと言えば、僕が縫い物をしている間に、米を研いでおいてもらうくらいしか思い浮かばなかった。