2009.3.6

 滅多に鳴らない大橋のぞみのデモテープ版「崖の上のポニョ」の着信音に携帯電話を持ち上げたら、発信欄に「父」とあっておののいた。
 いつ以来の会話だろう。父親はやけにゆっくり、めんどくさそうに、10歳になる前に離れ、与り知らないところで成長した息子に対し、すごく気まずい、畏怖に似た感情を抱いている感じを漂わせながら、じいぃっとりと喋った。
 用件はもちろん結婚式の打ち合わせ。食事会を座敷で両家向かい合ってやると確認すると、
「……やだなあ」
 と本音をオブラートに包むことなく口に出してきた。それがもう本当に心の底からの言葉なのだろうな、と一瞬で伝わる「……やだなあ」で、まあ不倫して子ども作って出て行った(ということなのだと思う)家の、姉の時みたいに割と大人数で、円テーブルがいくつも会場にある披露宴とかならまだしも、親族だけで行なわれる結婚式に「知人」として呼ばれるのはきついよなあ、この人の立場だったらおばあちゃん(母の母)とかすごい怖いんだろうな、と納得しつつも、それはまったくもって彼の自業自得なので、はあ?うるせえよ、と思った。