2009.1.5

 ファルマンがようやく戻ってきた。
 しかし一筋縄ではいかなくて、午前中にメールを受信し、誰からかと見れば上の妹からで、「お姉ちゃんがケータイを忘れました」とのメッセージである。ああさすが、と思った。そうそう、そうでなくっちゃファルマンじゃないよね、という感があった。
 かくしてファルマンは携帯電話を持たずに半日の移動をすることになった。
 もっとも彼女も大人だから、帰ってくること自体は問題ない。大体の帰宅時間も事前に聞いているので、こちら側の食事の準備も大丈夫だった。
 なにより僕が危惧したのは、「ぱぴこさんが半日もの移動の最中、日記を書けないなんて」ということである。あのぱぴこさんが日記書きを禁じられてしまったら、いったい移動中なにをするというのか。眠るのも、ずっとというわけにはいかない。起きている間、彼女はいったいなにをするのか。することなどなにもない。普段だって日記書き以外なんにもしてないではないか。
 これは相当のストレスを溜めて帰ってきて、帰宅するなり食事もそこそこに阿修羅のごとくキーボードを打ち叩くに違いない、と僕は覚悟した。
 でも帰ってきたファルマンは、疲れた様子はあったもののまあまあ上機嫌で、ほとんどパソコンに向かう様子がなかったので、拍子抜けした。危惧のことを話すと、「私はあなたと違って、「ない」となったもののことを、半日もうだうだ考えたりしないの」と言われ、ああそうかいと思った。
 僕なんか、「ない」となったもののことを、半日もうだうだ考えたりするのではないか、と半日うだうだ考えていた。ここまでくれば立派ではないかと思う。