義母と義妹がもう我が家には泊まらない3日目は、荷物を持って横浜へ。なぜ横浜かと言えば、義母がせっかくこちらに出てくるということで、うちの母が「ぜひ横浜へ」みたいな感じに誘ってきたからである。
渋谷から東急東横線で横浜に行き、そこから直通でみなとみらい駅へ。集合場所の改札付近に母は既にいた。夏に挨拶をしに行ったばかりなので、義母はもちろん、その際ドラッグストアでバイトしていたところを強襲された義妹も、母とは初対面ではない。どうもどうもといった感じのゆるやかな再会となる。
ちなみにみなとみらい駅を利用するのは僕は初めて。横浜のほうには本当に来ない浜っ子なのである。なので駅の造りには、ほほー、とおのぼりさんのように感心してしまった。吹き抜けの感じがすごい。すごい自然光を採り入れる感じ。デートとかで来たらとてもいいと思う。
集合が昼過ぎだったので、まずはお昼ごはんを食べようということで近くの中華料理屋へ。横浜ということでなんとなく中華にしたが、別に中華街的な雰囲気は一切ない中華料理屋だった。でも遊園地を眺めながら食べる中華はまあ美味しく、なによりビールが美味しかった。思えば今回の3日間、僕は朝食時以外は必ずビールを飲んでいたことだ。優雅である。
食事を終えたあとはランドマークタワーに昇る。これは出来立ての頃に連れられて行った覚えがある。相変わらずエレベータが速い。あまりにあっという間なので、エレベータが猛スピードで稼動していると考えるより、ワープとかしているのだと考えるほうが自然な気さえしてくる。
展望階からの風景は、おー、という感じで、それ以上でもそれ以下でもなかった。展望室のホールで、企画としてそのまんま七夕の短冊みたいな、ハートのオブジェに願い事を書いた紙を貼る、というのをやっていて、僕らは誰も書きはしなかったのだけど貼ってあるのを眺め、「幸運な人間になれるよう努力ができる人間になれますように」という紙を発見し、しばし嗤った。
ランドマークを降りてからは、あかいくつ号というバスに乗って、赤レンガ倉庫のほうに移動する。いやはや実に観光していることだ。赤レンガ倉庫ってなんなのかな、と思っていたのだが、行ってみたらけっこう普通の商業施設で、もともとが倉庫だったということなのか、開放感のない造りで、しかもそのテナントの中にラッシュなんかが入っているものだから、そもそもラッシュの香りが得意でない僕はどうしようもなくなってしまい、女性陣がウロウロと見物をしているところを、先に外に出させてもらった。これは本当にきつかった。
それでもしばらくその界隈で過ごしたあと、みなとみらい駅まで、今度は歩いて帰る。あかいくつ号があまり快適でなかったので、そんなに距離もないし歩こうかということになったのだが、歩いてみたら微妙にしんどかった。
この時点で4時ぐらいになっていたので、母とはここで解散。
義母はこれから品川で友達と会う約束があり、そのまま義妹と品川のホテルに泊まるので、ファルマンと僕も夕食のご相伴ついでにそちらについてゆく。
途中の横浜で義妹はまたしても化粧品だかなんだかを買っていた。ファルマンとの暮しでは、あんまりメイクとかブランドとかそういう単語を意識しないのだが、それに対し義妹はすごいなあと思う。あと、ここで特にすることもなく女性陣のあとをついていたら、「先輩」と呼ぶ声があって、振り返ったら大学の後輩の女性が店員として働いていたので驚いた。この際、もしかすると義母から「なんて顔の広い人だろう」と思われたかもしれない。それならそれでいい効果だなと思う。
品川までは京急。本当にまるで乗ったことがない路線だ。なんか分岐が多くて、途中で4両切り離すとか言うし、初心者に優しくない路線だと思った。
それでもなんとか品川に到着し、義母たちの泊まるホテルにチェックイン。義母の友達とも落ち合い、いったん荷物を置きに部屋のほうに移動する。この際、義妹からベッドの上でマッサージをしてもらう。横からファルマンが「義妹のマッサージはうまいだろう、気持ちいいだろう」と執拗に訊ねてきたが、マッサージの技術がうんぬんではなく、純粋にいやらしい意味で義妹に身体を触られてしあわせだった。残念ながら両足をやったところで義母からの召集が掛かり食事に移動となったのだが、あのまま続けば義妹が僕の背中に馬乗りになるところまでいったのではないかと推測される。惜しかった。
食事はイタリアン。ホテル内のレストランなので割と高級だ。僕はすごくラフな恰好をしていたので、大丈夫かと心配したが別に大丈夫だった。注文はコースにして、カルパッチョやらパスタやらステーキやらを美味しく食べた。飲み物はもちろんビール。
この際、義妹の恋愛の話を大いに聞き、気になる人がいると話す義妹に向かい、「猛烈アタックしちゃいなよ」とアドバイスしている自分がいて、「ああ俺は「猛烈アタックしちゃいなよ」と恋愛アドバイスをしたことだよ」と少しへこんだ。
店から出たところで散会。義母と義母の友達と義妹はホテルに戻り、ファルマンと僕は品川駅へ。時刻はもう22時近く。明日は仕事だ。品川から自宅へは割と面倒くさい帰途になる。思えば昨日からかなりのハードスケジュールだった。思わず、ふひー、となった。
でもまあ疲労した分だけ愉しかったし、こちら側としても後悔しない度合いで接待できたように思えたので、たまのことだし、張り切ってよかったのだと思う。よかったよかった。