2008.10.8

 職場でちょっと前に異動があり、勤務先が変わって、ちょっとだけ出勤に時間が掛かるようになった。これまでは電車で15分掛からなかったのが、50分くらい掛かる。そして大学生の頃あざみ野から航空公園(さらにはそこからバス)まで片道3時間弱掛かっていた身としてはそれはぜんぜん苦ではなく、むしろまとまった読書時間ができた感じで喜んでいる。
 それでそのまとまった読書時間で、僕はやはり純粋理性批判を読んでいるのだが、純粋理性批判なので、50分も読むと全体の3分の2くらいは読めてしまうのである。そしてそんな風に、一気に全体の3分の2くらいを読んでいて気付いたことには、純粋理性批判はテンポがすごく早い。300ページくらいで3、4人と2回ずつくらいセックスをし、さらには最後には全員で一斉にやるシーンを精魂こめて書かなければいけないと考えれば、そうなるのは当然と言えば当然なのだが、登場人物紹介で「主人公に敵意を持っている」みたいに紹介された女の子が、気付けばもう主人公とセックスをしていることだ。実を言えばずっと主人公のことが好きで、敵意を示していたのはそれの裏返しで、そのことを白状し、セックスしているのだ。もはや「敵意を持っている」という情報は、ほぼ登場人物紹介欄でしか感じられないと言っていい。
 これはあんまりよくないな、と僕は思った。これまでは15分の乗車時間で小刻みに読むことにより、その間の物語の時間を自分の想像で膨らますようなことを無意識にしていたのだと思う。それが一気に読むことでベールが掛からず、丸裸にされてしまった形だ。文字通りあっという間に丸裸になる。ゆえによくない。