昨夜遅くに帰ってきたファルマンは、なんかいきなり泣き出して、非常にタチが悪かったのだった。僕は眠かったこともあるし、なにより飲み会で悲しくなったような人間を慰めてあげるような、そんな無駄で阿呆なことはしたくなかったので、「とっとと寝ろ! 俺も寝る!」と言って眠った。
そうして土曜なのに労働に出掛け(ファルマンはもちろん寝ていた)、帰ってきたら、昨晩の僕の冷たさについてファルマンが怒っていて、本当にもうなんて面倒くさい女だろうか、と思った。もちろん僕はまったく下手に出ることはなく、「出ていけ」だの「出ていく」だのあっちが吼えるのを適当に流し、そうしていたらしばらくして頭が冷えたのか、ようやくファルマンが態度を改め、それを心の広い僕は普通に許してやったのだった。こう書くと、本当にすばらしい人間ですね。
お酒を飲んで悲しくなる人間とか、本当に理解できない。僕なんか飲み会前夜は愉しみであまり眠れないし、実際に飲みはじめると圧倒的な「愉しさの泡」みたいのが全身を包み、しかしそれを全ては味わい尽くせない自分を歯がゆく感じて、ジタバタして、なんかもうとにかく気持ちが盛り上がってゆく。だから要するにとにかく愉しいのだ。せっかく一食に3000円ほどという考えられない金額を費やすのだから、そのくらいの効果は得られないともったいない。ましてや悲しくなるなんて、あまりにも馬鹿げていると思う。