ファルマンのやっている短歌の次のお題が「供」で、どうも難しくて悩んでいるらしく、「蝶」に引き続いてまたアドバイスを押し売りする。
「供」で思い浮かぶ言葉と言えばやはり「供物」だ。そこで、
「「虚無への供物」を書いた中井英夫、そして彼に対し淡い恋心を抱いていたらしい中城ふみ子の「乳房喪失」、その4つのキーワードを詠み込んだ、大河ドラマ的な31文字にしたらどうか」
と提案した。
それを聞いてのファルマンの返答こそが、このエピソードの主題である。彼女曰く、
「そこには私がいないじゃない」
ということで、その言葉に僕はハッとさせられたのだった。