2007.7.9

 恋人は出勤。僕は労働が休み。
 月曜のゴミ当番は僕なのだが、朝つらくしていたら恋人が出してくれたので、お礼として日中は恋人の携帯電話の捜索をする。
 携帯電話の捜索とはこれ如何に、僕のほうの電話で着信させりゃあ一発じゃないかという話なのだが、実はなんとも間の悪いことに電池切れなのだった。だから電話をかけてもすぐに留守電になってしまう。なので自力で見つけるしかない。
 しかしこれが見つからない。ぜんぜん広くない空間で、しかも酔っている頭でどうにかしたのだからそんな特殊な場所にあるはずがないのに、まったくもって見つからないのだ。押入れの中、たんすの中、キャリーケースの下、そんな場所にあるはずもないのに。
 あまりにも見つからないので、もう居酒屋とかで失くしたんじゃねえの、と匙を投げる。恋人と連絡を取ったところ「居酒屋からの帰り道、あなたが私の代わりに図書館からの留守番メッセージを聴いてくれてたじゃない」と言われるが、そんな記憶はまったくない。堂々と言うが酔っていたのでぜんぜん憶えていない。
 午後になり、銀行で新しく口座を作る必要があったので外出する。次の引越し資金を貯めるための、恋人との共有口座である。
 しかし携帯電話が見つからないことには口座どころじゃない。恋人はipodに釣られてソフトバンクなので、途中で紛失して契約を止めたりすると大変なのである。本当にもう恐怖を覚えるくらい大変な値段を請求される算段らしいのだ。
 夕方になり恋人が帰宅して尚も探すが、尚も見つからない。居酒屋に電話してみるが、忘れ物の携帯電話はないという。
 そしてこんなに見つからないということは、もしかしてタイムリーな今朝の燃えるゴミで出してしまったのではないかという疑念が湧き出てくる。不都合なことに僕は昨晩グデングデンだったくせに買い物の包装とかをちゃんと片付けていたのだった。そのことが槍玉に挙げられ、燃えるゴミの袋の中に一緒に入れてしまったのではないか、と責められる。
 そんなことはしないと思いつつも、あまりにも見つからないのだからどうしようもない。発生するお金のことを考え暗澹たる気持ちになりつつも、もう哀しんでもしょうがないと気持ちを切り替え夕食の準備に取り掛かろうとする。
 その矢先、「そう言えば前にもこんなことあったよね、そのときはティッシュ箱の中に入ってたんだよね……」と恋人がつぶやき、僕はそれを聞いてハッとする。恋人は自ら口にしながらぜんぜんハッとした様子がない。一体どういう精神構造をしているのかと思う。
 果たしてティッシュ箱を持ち上げたら異様な重さで、しっかりと恋人の青光りする携帯電話が入り込んでいたのだった。
 たしかに2年くらい前にも、携帯電話ではなく腕輪だか指輪だかで、今回と同じ場所で発見された失くし物があったのだ。なので今回のことはそれの再来で、その頃のことをちゃんと覚えていればすぐに見つかったわけで、これは交際4周年記念デートの顛末として相応しいような、あるいは疑いを持たれたことに大いに頭が来るような気がするのだった。