少女たちは吾輩の姿に気付くと、歓声をあげながら近寄ってきた。まさかpapiroの脳内にこのように具象化された少女たちが潜んでいるとは知らなかった。キイキイと高い声を発しながらすぐ傍までやってきた少女たちに向かい、吾輩は自慢の低音でまずこう述べた。
「吾輩はクチバシである」
するとなにがおもしろいのか、少女たちはふたたび嬌声をあげた。思うにこのくらいの年齢の少女たちは、友達と一緒にいればこの世のなにもかもがおもしろいのであろう。
「吾輩はpapiroの脳内を描写するため、こうして脳内を徘徊している者である。君らもここにいるということは、吾輩とはきょうだいのようなものだろう。きょうだいのよしみで、吾輩に君らの設定──いや、素性を教えてくれたまえ」
吾輩は紳士的にそう述べた。しかしその言葉に対し、少女たちはきょとんとするのみで一向に返事を寄越さない。吾輩がおかしなことでも言ったかのように、無邪気に笑い飛ばすこともなく、もはや少女たちは気味悪げな顔つきでこちらを見るようになってしまった。
これは困った──と、14の瞳に見つめられながら吾輩は思った。どうしようもない沈黙が場を支配した。吾輩も少女らもそのまましばし押し黙り、互いの出方を探った。