よく「思春期」ということが言われますが、これと二次性徴はどういう関係があるかと言いますと、二次性徴による性ホルモンの増加とはすなわち「体が生殖可能になったことを告げるサイン」なわけですから、生物学的に考えて個体は「繁殖をしたくなる」わけです。生きものはなにしろ結局、子孫を残すためにあるわけですから、これは当然の作用ですね。そして繁殖をしたくなったあなたたちが異性のことを考える──春を思うわけです。
要するに思春期とは二次性徴(身体的)によって引き起こされる精神的な変化ということです。言ってみればこれは昆虫における雌のフェロモンに反応する雄と、作用としてはまったく一緒です。ヒトは言葉を持っているため下手に勘違いしていますが、生きものなんてぜんぶ結局は化学物質に操られているわけです。いやむしろ、物質によって誘導されない意志や精神などは存在し得ないのです。
そしてここで考えなければいけないのは、そうです。
「体が成長して性ホルモンの働きが活発になり異性への興味が高まるのなら、思春期とは一体いつ終わるのですか?」
この質問の答えですが、ずばり「終わりません」。
1秒間にすさまじい数の精子を製造している成年男性は、つねに異性のことを考えているわけです。もちろんそれは女性も基本的には一緒です。春(異性)を思う時期に終わりはないのです。要するに思春というのは中学生の諸君に新たに与えられたメガネのレンズのようなもので、慣れないうちは違和感があるわけですが、そのうち世の大人たちのように、そのレンズ越しの世界を受け入れられるようになるものなのです。これは余談ですが、だから厳密に言えば、いま一般的に言われている「思春期」は、正確には「始思春期」と言うべきでしょう。先に死しかない長いトンネルの入口なのです。