2004.10.12

 こうして考えると、森林伐採なんてとてもできるものではないと思う。
 1本の樹を伐採することはひとつの世界を壊すことと同義である。
 われわれ人間が世界の終わりを恐怖に思い、だれの頭からも忘れ去られてしまうのを忌避するように、昆虫だってそれを怖れている。むしろ昆虫は人間よりも子孫を残し自分の遺伝子をつなげることに対して貪欲かもしれない。
 彼らに世界の終わり──自分も死に、自分の遺伝子を持っている家族も死に、自分を覚えている存在も死ぬ──を与えることは、とても赦されるべきことではないだろう。それだけはしてはいけないことだ。どの生きものも、それだけは避けようとせっせと精進しているのだ。アマゾンの森林伐採をする以上は、われわれは今この瞬間に核戦争が起こって地球が爆発しても、神様によって一瞬にして宇宙を消滅させられても、なんの文句も言えない。虫に対してまったく同じことをしている。